マレーシアでの商標登録についてQ&A方式で解説いたします。
なお特に注記がない場合、マレーシアでの商標登録について記載しております。

Q1.マレーシアで商標を取得する必要性は高いのですか。

A1. 2015年度のマレーシアにおける商標出願件数は35,923件に上り、過去最高を記録しています。うち56%は国内出願人によるものであり、海外からの出願は1位がアメリカ、2位が日本です2015年度の登録件数も28,800件となっており権利の確保の必要性は高まっています。(日本での商標登録件数は年に約十数万件です)。

また、商標を取得せずに、その商標を使用して事業を展開していますと、他者から商標権を侵害していると訴えられるリスクを抱える事になります。そのため、マレーシアで事業を始める場合、前もって使用する商標について商標権を取得する必要性は高いと言えるでしょう。なお、商標権は原則、国ごとに設定されます。そのため、日本で商標権を取得していても、マレーシアで商標権を取得していなければ、権利が及ばないので注意が必要です。

Q2.商標が侵害された場合、どのような対策をとる事ができますか?

A2.他人が商標を侵害した場合、民事訴訟及び刑事訴訟/行政措置を通じて権利行使をする事ができます。民事訴訟では、商標の使用の中止、侵害品の引渡し・廃棄、損害賠償請求、訴訟費用の負担等を求める事ができます。また、訴訟の途中で、被告と和解できる可能性もあります。ただし、訴訟費用等が必要なため、比較的、高コストになります。

刑事訴訟/行政措置では、国内取引・協同組合・消費者省(MDTCC)を通して、商標侵害に係る取引表示法(TDA)に基づき、侵害者に対して刑事制裁を求める事ができます。なお、この手続きが権利者に最も利用されているとされます。費用は比較的低コストで済みますが、刑事訴訟まで行かず反則金の支払いだけで済む事が多いため(反則金は、商標権者には入りません)、抑止力に欠ける場合もあります。そのため状況(侵害品の数など)に応じて適切な対応をとる必要があります。

Q3.商標を出願する際、どのような書類を準備する必要がありますか?

A3.必要書類としては、
(1) 願書(出願人の名称や優先権主張の情報等を記載)
(2) 商標を使用する商品又はサービスのリスト
(3) 商標見本
(4) 宣誓書(出願人が商標を善意で所有している事を宣誓する書面。なお、公証認証が必要)
(5) 優先権証明書(提出要求があった場合のみ)
(6) 委任状(認証は不要)です。

なお、商標に使用する言語は、マレー語又は、英語である必要があります。もし、商標にそれ以外の言語が使用されている場合、訳文が必要になります。

Q4.商標の出願の流れは、どのようになっていますか?

A4.「出願→方式審査→実体審査→公告→異議申立期間(公告から2か月)→登録」という流れになっております。また、出願から登録までの目安期間は12~18ヶ月です。ただし、あくまでも目安であり、状況によって登録までの期間が大幅に延びる事があります。

Q5.登録を受けることができない商標としてはどのようなものがありますか?

A5.登録できない主な商標は以下の通りです。
・既に登録となっている商標と同一又は類似の商標
・マレーシアで周知となっている商標
・地理的表示の商標
・法律に反する標章
・中傷的又は攻撃的な標章
・国益又は国の安全保障を損なう標章
・王室の紋章を表す標章

Q6.マレーシアへ商標出願する際、マドプロ制度を利用する事はできますか?

A6.マレーシアはマドプロには加盟していないため、直接マレーシアに出願する必要があります。

<筆者紹介>
永田 貴久(永田 貴久)
TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD. 共同代表取締役兼弁護士・弁理士(日本法)
京都工芸繊維大学、大阪市立大学法科大学院院卒。
日本の永田国際特許事務所(http://www.nagata-patent.com/)共同代表、
タイのTNY国際法律事務所(http://www.tny-legal.com/)共同代表。
各国の知的財産関連業務及び日本法、タイ法関連の法律業務(契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。

問い合わせ先:t-nagata@tny-legal.com

TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD (https://www.mnavi.com.my/ja/product/detail/id=145/