アメリカ、中国、オーストラリアに続いて世界で4番目に在留邦人が多いタイ。

日系企業も多く、ほとんどの困り事は、日本語でもサービスを受ける事ができ、住む側としては快適さがある一方で、働くとなると、競合も多く、飽和状態。各企業が独自の工夫を凝らしながら、生き残り合戦を常にしている印象があります。

今回はあるユニークな事業形態を取って事業をうまく進めている日系企業について取り上げたいと思います。

その企業がユニークなのは「不動産事業」と「タイ語学校」を協業させ、2つのビジネスをうまく補完し合わせ、お客様への満足度を上げようとしているのです。

さらに、タイ語学校のサイトではBLOGを積極的に活用し、運営開始1年強で月間閲覧数が5万ユーザーのサイト(2020年2月時点)となっており、現在も積極的に閲覧数を伸ばしているそうです。
※2018年タイを訪れた日本人は約160万人で月間13万人程、バンコク在住の日本人が5万人強と言われているため、約4人に1人がBLOGを見ている計算となります。

なぜ、まったく業種が異なる2つのビジネスを選んだのか? 代表の田端さんにお聞きしました。


タイのバンコクを拠点とするNayoo Group Co.,Ltd.代表の田端雄介さん

田端雄介さん プロフィール
不動産仲介業の「Nayoo不動産」と、語学学校の「LABタイ語学校」、共同事業でレンタカー事業とHostel運営、その他IT事業など幅広い事業を展開するNayoo Group Co.,Ltd.(拠点:タイ・バンコク)代表。大学卒業後、大手メーカーの開発を経て、不動産営業を経験後、25歳で海外へ。
2015年からバンコクで不動産事業、2018年からタイ語学校事業をスタート。タイ語学校のウェブサイトのブログは、開始1年で月間閲覧ユーザー数が5万を超えるまでに成長。


低価格&日本人エリア以外の物件を紹介する差別化戦略

--  バンコクではIT事業からスタートし、次に不動産事業を始めたそうですが、なぜ不動産を選んだのですか?


田端 2014年の事業開始時点では、IT事業の現地責任者としてIT関係の広告業やウェブ制作の仕事をしていたのですが、競合が多かったこと、日本と比べて受注単価が低いことなどから苦戦していました。

事業継続のためIT事業を縮小し、イベント企画や通訳等々、お声掛け頂ける全ての仕事に取り組んでいたのですが、日本で不動産営業の経験があった事もあり、不動産関係の仕事が一番安定して、お客様が付いてくれるようになっていった為、不動産事業を柱にすることにしました。

--日本人を対象とした不動産仲介会社は、すでにバンコクにたくさんあったのではないかと思いますが、どうやって差別化を図ったのですか?


田端 競合他社ができない予算やエリアから取り組むことで、経験と実績を積み、お客様の満足度を追い続けることで、差別化でき、事業が継続できているのだと思います。

不動産事業を始めた2015年頃は、高額予算で家を借りてくれる駐在員のみを対象とし、エリアもスクンビット(アソーク、プロンポン、トンロー、エカマイ周辺)に限定した賃貸業者がほとんどでした。その予算帯やエリアに合わなかった場合、家を探していた方の多くが困っているということがわかり、そこにニーズがあるだろうと考えました。

多くの競合他社が行っていないエリアや価格帯というのは、利益が出ないからやっていなかったわけで、それをなんとか利益を出せるようにするため、自分の経費はもちろん。抑えられるコストは限界まで抑えるようにして、成約さえ取れればなんとか利益が少しでも出るようにし、お客様のニーズに答え続けてきました。

一番利益が出ない(赤字の)時期は若かったこともあり、自分の給与を取る必要がなかったというのは、非常に良かったと今は思います。依頼があればどんなものでも受けていました。

それを積み重ねた結果、現在ではバンコク市内であれば、幅広いエリア・価格帯で、自信を持ってお客様に安心していただける仲介業をできるようになり、多くのオーナー様と取引実績を積み重ねてきた結果、現在では、繋がりがあるオーナー様の数では業界トップクラスです。


バンコク賃貸情報館公式サイトのトップページ
【画像】田端さんが運営するウェブサイト「バンコク賃貸情報館」

タイの文化や慣習、部屋の情報を入居者と共有してトラブルを回避

--これまで日本人が住んでいなかったエリアの物件を開拓するのは大変だったと思いますが、不動産事業でご苦労されたことを教えてください。


田端 新しい物件を取り扱うには新しいオーナー様との人脈をいかに築くかがカギになります。オーナー様との人脈は、単純に足で稼いでいます。一度連絡先を入手したら、可能な限り継続してコミュニケーションをとり、担当者を一本化することでオーナー様に安心して取引を続けていただけるようにしています。いい関係性が築けると、オーナー様からまた別のオーナー様をご紹介いただけることも多いです。

不動産業で一番大変なのは、オーナー様と入居者様との板挟みになること。トラブルを発生させない為には、双方とよりよい関係を築いていくしかないのですが、実績を積んでいくなかで、トラブルになる可能性を低くするようなノウハウも積んできました。

--不動産事業のトラブルというとどういうものがありますか?


田端 タイではほとんどのお部屋に家具や家電がついており、これこそがトラブルの原因となっています。物件によって家具や家電が異なり、トラブルの原因も異なる為、防止策の予想は非常に難しいです。

私の場合、Hostel共同事業や、お部屋を販売したお客様のお部屋では、内装や物件管理も行っており、オーナー側の立場にならないとわからないような視点と経験を積んできました。

その為、普通では予想できないような視点を持って、お客様に防止策をお伝えできているケースもあると思います。内覧時や契約時にはしっかりと時間を取り、お客様とタイの物件事情について情報共有するようにしています。

契約時は説明だけで1~2時間かけることもよくありますし、注意事項については文章にして、「口頭+文章」でできるだけわかりやすく伝えるように心がけています。

物件の話だけではなく、タイに来たばかりの入居者様には、タイの習慣・文化についてお伝えし、トラブル防止に向けた動きを取りやすくするようにコミュニケーションを心がけています。

田端雄介さんの写真。タイに住む日本人向けに講演する様子。
【写真】タイに住む日本人向けに講演する田端さん

日本語堪能なタイ語の先生が不動産の顧客対応も

--すごい量の業務をこなされているようですが、スタッフの数は多いのですか?

田端 スタッフの雇用にはずっと苦労してきました。日本語が話せるタイ人スタッフを雇用するとなると、どうしても給与は高くなります。そのため、英語が話せるスタッフを雇っていたのですが、英語では日本人のお客様の対応は難しく、私が寝る間を惜しんで日々の業務を回していました。

--それは大変ですね。その状況はどうやって解決されたんですか?

田端 2018年にタイ語学校と提携させ、必要に応じて日本語が話せるタイ人の先生たちにも不動産の顧客サポートをしてもらう体制をつくりました。その結果、ほとんどのタイ人スタッフが日本語堪能な人材となり、入居者様へのサポート体制が充実しました。

タイ語学校で受講いただいた入居者様とは格段にコミュニケーションが取りやすくなり、小さな困りごとも相談してくれるため、大きなトラブルにならないうちに解決できるケースも増えました。

【写真】LABタイ語学校の授業の様子

2つの事業を連携することで顧客満足度が向上

--不動産とタイ語学校という一見関係なさそうな二つの事業を連携して展開することで、すごい相乗効果が生まれたんですね!

田端 はい。2つの事業を連携して展開したことで、さまざまな面で相乗効果を感じています。

先述のように、入居後のサポート体制が充実したり、入居者様がタイ語を習うキッカケが作れたり、また、タイ語学校の生徒さんがお部屋探しの際にお声をかけてくださったり……。

事業を始める際には、社会に貢献できるかどうか、という点を重視しているのですが、不動産と語学学校を連携させたことで、よりお客様の幸せに貢献できるようになったと思います。

LABタイ語学校の公式ウェブサイトトップページ
【画像】田端さんが運営する語学学校[「LABタイ語学校」の公式ウェブサイト

タイ語を学ぶことで生活が充実しキャリアアップも

--英語がかなり通じるマレーシアと異なり、タイでの生活はやはりタイ語が分からないとやはり難しいこともあるんですね。


田端 タイ語を習ってタイ人とのコミュニケーションがとりやすくなると、タイでの生活がより充実したものになりますし、仕事でもタイ人スタッフとやり取りし易くなれば業務もスムーズに進むようになります。またキャリアアップにつながる可能性も高いのではないかと思います。

タイは日本人が多いですが、そこまでタイ語が話せる人材が多いわけではありません。だからこそタイ語が話せる人材の市場価値が高く、昇給や転職の際に、仕事先を選べる可能性も非常に高くなると聞いています。

タイのバンコクにある日系タイ語学校LABタイ語学校のプライベートクラスの写真
【写真】プライベートクラスでタイ語を習得する日本人も多い

自社メディアを育てて新しい出会いにつなげたい

-- 今後、挑戦してみたいとお考えの事業はありますか?

田端 直近の1年で、タイ語学校のウェブサイトのブログが急成長し閲覧数をどんどん伸ばしています。このブログをより充実させ、バンコクに住む多くの方の生活に役立つ情報を発信していきたいです。多くの方々に見ていただくことで、より多くの方がタイ語学習を始めたり、学習を続けていくきっかけとなれればと思います。

そして、自社メディアを持つことで、将来、何か新しい出会いやご縁があった際に、広告媒体としての役割りをしてくれる可能性もあると思います。

2つの事業を継続できるよう、しっかりとお客様のご要望に応え続け、現在の事業を大切にしながら、もっと多くの方と出会い、何か新しいキッカケをつかみ、新しいビジネスもしてみたいと思っています。



― 田端さんが運営する事業の公式サイト ―


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