JSAM代表の藤山さんと秘書会計の岩成さん

❝ゼロから何かを生み出す経験を通じて「マレーシア留学」の価値を高めたい❞

◆プロフィール◆
藤山 華梨衣さん
JSAM代表。Sunway University 1回生、コミュニケーション学部。2018年10月に代表に就任。

岩成 咲良さん
JSAM秘書・会計。Taylor’s University 3回生、ホスピタリティマネジメント学部ホテルマネジメント専攻。

◆JSAM概要◆
JSAM(Japanese Student Association in Malaysia)は、マレーシアに留学中の日本人学生によって2016年に結成された学生組織。活動の目的は、「日本人学生のマレーシア留学の価値を高めること」「日本文化の発信」の2つ。マレーシアにいる日本人留学生や日本語スピーカーを対象とした「就活フェア」や、日本文化を紹介する「アキフェスト」などのイベントの企画運営のほか、マレーシアに来たばかりの日本人留学生の生活をサポートしたり、マレーシア留学を検討している日本人の高校生にアドバイスしたりといった活動を行っている。

 


2019年4月には、2018年10月に開催した「就活フェア」の第2回目を開催。エアアジアやIBMなど大企業ともコラボした大規模なイベントを次々に成功させているJSAM(マレーシア日本人学生会)は、実は2016年に誕生した比較的新しい学生組織。お話を伺ったお2人はキラキラと若いパワーがあふれていて、マレーシアの大学で勉強する日本人学生がどんどん増加するのに伴い活躍の幅を広げているJSAMの今後が楽しみになりました。


 

JSAM立ち上げのきっかけは卒業後の「就活」

― 先日(2019年4月)の「就活フェア」は大盛況でしたね。あんな大きなイベントを企画運営したのが学生さんというのにびっくりしました。まずは、JSAMという組織がどういう経緯で結成され、何を目的として活動しているのか教えてください。

藤山 私は2代目の代表なのですが、JSAMを立ち上げた初代の代表は松野健太郎といいます。
私はJSAM立ち上げ時にはマレーシアにいなかったので聞いた話ですが、JSAM立ち上げのきっかけはマレーシア留学を終えて日本に帰国した先輩たちが就職活動に苦労しているのを見て、「就活などに関する情報を交換するための日本人学生のコミュニティが必要だ」と感じたことだそうです。

日本の大学では当たり前に提供される自己アピールの方法や、就活のルールなど必要な情報が海外の学生には入ってこない。そこで、マイナビさんとコラボして就活についての説明会を開催したところ、かなりの日本人学生が集まったそうで、行動力のある学生が多く、一緒に何かやれそうと思い、みんなで何かやろうよということでJSAMを立ち上げたそうです。

マレーシア留学経験者による就活ガイダンス
マレーシア留学経験者による就活ガイダンス

 

―マイナビさんとコラボなんて、最初からすごいですね! JSAMの活動の目的は「就職」ということなんでしょうか?

藤山 JSAMの活動の軸は2つあります。

①日本人留学生のマレーシア留学の価値を高めよりよい就職を目指す「キャリア系」

②日本文化を発信する「文化系」

①は、マレーシアの大学でどんなに頑張って勉強しても、現状としてマレーシア留学がマイナーであることは事実で「英米への留学経験者が優れている」というイメージが世の中にはまだまだあると思います。それなら就活の時にアピールできる経験ができる場を作ろうと、さまざまな企業様とコラボして「就活フェア」などのイベントを企画運営しています。

毎年9月に開催しているアキフェス
毎年9月に開催しているアキフェス

 

②は、秋祭りをイメージした「アキフェス」が代表的なイベントです。
日本文化の発信や日本に興味がある外国人との交流を目的としていて、浴衣の着付け体験や、焼きそばやたこ焼きといった日本の屋台料理を提供したり、日本の歌を歌えるアーティストを呼んでパフォーマンスを披露してもらったりしています。文化系のイベントは小規模なものも含めると運動会や寿司メイキングなど1年を通じて開催しています。

 

日本の高校生にマレーシア留学という選択肢を知って欲しい

―イベント以外の活動もされているんですか?

藤山 マレーシア留学をもっと日本の高校生に知ってもらうための「留学カフェ」や、マレーシアに来たばかりの留学生のサポートもしています。

実はJSAMには日本支部もありまして、元JSAMのメンバーが社会人をしながら窓口をしています。マレーシア留学に興味がある高校生やその両親から問い合わせがあったらマレーシアにいるスタッフにつなぎ、私たちが日本に一時帰国した際に実際に会ってマレーシア留学についての質問にお答えする「留学カフェ」を開催したり、日本の文部科学省がやっている「トビタテ! 留学JAPAN」、マレーシア政府観光局、そしてJSAMが共催したイベントで、日本の国際関係学科の教員や留学エージェントの前で講演したこともあります。

マレーシア政府観光局、文部科学省「トビタテ! 留学JAPAN」と共催の「マレーシア留学・研修セミナー」を日本ASEANセンターにて開催
マレーシア政府観光局、文部科学省「トビタテ! 留学JAPAN」と共催の「マレーシア留学・研修セミナー」を日本ASEANセンターにて開催

 

岩成 マレーシア留学に関する問い合わせは、メールでいただければ、可能な範囲でJSAMの担当者がお答えしています。

― 無料なんですか?

藤山・岩成 無料です(笑)

岩成 マレーシアの食事環境やアレルギーに関してなど、かなり個人的な質問もしていただいて大丈夫です。

藤山 エージェントのようにライセンスをもっているわけではないので、学生ビザの取得などに関してはアドバイスまでしかできません。ただ、前代表の松野が私たち留学生の要望を満たせるようなマレーシア留学エージェント「マレーシア留学支援機構」を立ち上げたので、最近ではそちらをオススメしています。

―マレーシアに留学する日本人学生が増えている印象ですが、どうなんでしょうか?

岩成 大手の留学エージェントがマレーシアを扱うようになってきて、ここ数年でかなり学生数が増えているようです。

藤山 在マレーシア日本大使館によると、正規の学生ビザを持っている日本人は700人いるそうです。クアラルンプールだけでなく、ペナンやサバ州、サラワク州の大学に行っている学生もいます。

岩成 日本人学生対象の割引などもあって数が一気に増えたのですが、英語力やモチベーションが低かったりしてすぐやめる学生も多かったとか。それと関連があるかはわかりませんが、入学要件のIELTS(アイエルツ)のスコアが引き上げられた大学/学部もあると聞いています。

藤山 エージェントさんは入学させたいわけで「マレーシア留学は安くて入学もかんたん」と謳っているところもありますが、実際マレーシアに来てみたらIELTSのスコアが足りなくて入学できず、英語コースに通わなければならなかったり、いろんなケースを聞いています。
私たちもアドバイスできますので、しっかり情報収集をしてから留学を決めて欲しいと思います。

 

マレーシア人と共催のイベントなどさまざまな経験ができる

― とても幅広い活動をされていますが、JSAMの規模はどれくらいなんですか?

藤山 発足時は3人だったそうですが、現在では20人です。
本部以外にも、日本人留学生がいる各大学にJSAMの支部があって、支部は現在6つの大学にあります。Sunway、Taylor’s、INTI、Monash、HELP、APUですね。あと、マラヤ大学に1年や半年の期間で来ている交換留学生が参加する場合もあります。

岩成 最近、留学生が増えていることもあって、JSAMのメンバーもかなり増えました。ただ、まだかっちりとルールがあるわけではなくて、メンバーで話し合っていろんなことを決めています。

JSAMの主要メンバー
JSAMの主要メンバー

 

―JSAMにはどうすれば参加できるんでしょう? そもそもお二人はどういう経緯で参加することになったんですか?

岩成 私は第一回目のアキフェスが開催されたときにJSAMに参加しました。元々Taylor’s Universityの日本人コミュニティに参加していたのですが、そこにJSAMの副代表がいて新しいイベントの企画運営を手伝って欲しいと声をかけられ、イベントの運営に携わったことをきっかけにJSAMからスカウトを受けました。

藤山 私はまずはアキフェスのボランティアとして参加しました。小さいイベントを想像していたら、企業やアーティストも参加する大規模なもので、学生が企画したのかと驚きました。そのあとJSAMの集まりで「アキフェスよかったです!」と話したら、メンバーにならないかと誘われて入りました。初めはイベントマネージャーと留学サポーターという役職で活動していて、2018年10月から代表になりました。

岩成 昔はスカウトがメインでしたが、最近はボランティアとしてイベントを手伝ってくれた学生が参加したり、メールで「参加したい」と問い合わせをいただくこともあります。

藤山 JSAMに参加希望者には、私と副代表が会うことにしています。JSAMに参加してもやりたいことが特にない人はすぐに辞めてしまうことが多いので、JSAMを通して実現したいことがある人に入って来て欲しいですね。

2019年4月に開催された「就活フェア」。毎年4月と10月に開催予定
2019年4月に開催された「就活フェア」。毎年4月と10月に開催予定

 

―藤山さん、代表を務めていて大変なことはありますか?

藤山 私が代表になったタイミングで世代交代で先輩が抜けて、しかもマレーシアに来たばかりの若いメンバーが一気に10人も増えたりして、当初は組織をどうやってまとめたらいいかわらなくて本当に大変でした。

先輩たちにいただいたアドバイスが「やり方を教えるんじゃなくて、ほめることが大切」というものです。「あなたにはこういう素晴らしいスキルがあるんだから、こういう方法はどう?」という感じで、気持ちで引っ張っていくことが大切だと。

あと、大学が違うと会う機会も少ないので、コミュニケーションを積極的にとりました。今ではいい関係が築けて組織としてもうまく回るようになってきたと思います。

― 現在はどんなイベントに取り組んでいるんですか?

藤山 JSAM全体で取り組んでいるのは、10月に開催予定のアキフェスの準備です。今回初めて、Taylor’s University内のアニメ好きなマレーシア人のグループ「アニメソサエティ」と共催することなっていて、企画段階から一緒に話し合って進めています。

マレーシアに来たばかりの日本人学生にとっては英語でのミーティング自体が大変ですが、それもいい経験になっていると思います。また、マレーシア人にもたくさん来場して欲しいので、マレーシア人やムスリムならではの視点は参考になります。

岩成 例例えば、提供する食べ物はハラルでないとムスリムの方には敬遠されますし、味付けの好みも違います。浴衣の着付けスペースも、肌の露出の基準が日本と少し異なるためどこまでプライバシーが確保できる空間であれば大丈夫か、など日本人とは違う視点の意見は貴重ですね。

藤山 私たちは、屋台といえば定番メニューのきゅうり棒を売りたかったけど、「マレーシア人には売れないよ」とアドバイスをもらったり、アーティストも、マレーシア人のファンが多い方を紹介してもらったり。ローカルの学生はやはりマレーシア人ならではの情報を持っていて助かります。

 

マレーシア留学は100%成功!

―日本人の高校生にマレーシアの留学を紹介する活動もされていますが、マレーシア留学ってどうなんでしょう?

岩成 英語圏への海外留学というと、アメリカやイギリスがまず挙がりますが、学費が高くて一軒家が建ちそうなほど。それに比べて、マレーシアの学費は年に100万円を切るくらいだし、しかも3年で卒業できます。生活費は家賃も含めて5万円でやりくりしている人もいたりと、東京で一人暮らしをして大学に行くより費用を抑えられます。

藤山 留学費用が安い、日常生活でも英語が使える、多文化、多民族な環境で中国語やマレー語も学べる、イスラム教徒の文化を身近に体験できる、治安が良く生活水準も高く生活しやすいなど、マレーシア留学の利点はすごく多いと思います。

日本国内や英米のような留学生が多い国だとすでに日本人学生の組織が出来上がっていますが、当学生会は、まだ日本人留学生が目新しいマレーシアで活動している唯一の日本人学生コミュニティだということもあり、日系企業の方が聞く耳をもってくださるというのも利点だと思います。

― JSAMの活動や留学生活を経て、今後、どういうキャリアを考えているのか教えてください。

岩成 私はキャビンアテンダントやホテルなどの業界に行きたくて留学したのですが、JSAMに参加してゼロから何かを生み出す体験をして考えが変わりました。
いろんな人に声をかけて協力してもらったり、たくさんの困難を乗り越えようと頑張った使命感や行動力はそのあとの活動にも生かせました。今は、さまざまなプロジェクトに関われる組織に属して、イベントを企画するような仕事に就きたいと考えています。

藤山 JSAMの活動で、企業様や政府とやりとりしたり、勉強だけでは得られない見えない価値が実力として身についたと思います。私は大学でコミュニケーションを専攻していて広告やPR、デザインなどを学んでいるのですが、学んだことをJSAMでも生かせたし、今後の進路でも発揮できると思います。

― 卒業後は帰国しますか? またはマレーシアや海外での就職を希望しますか?

藤山 JSAMで留学生を対象にアンケートを実施したところ、1回生は「就職は日本」という回答が多いのですが、3回生になると海外と日本が半々くらいになるという結果になりました。マレーシアに限らす海外で働きたいという先輩も多いのですが、ビザの問題があるので結局いったんは日本で就職する場合が多いようです

岩成 私自身も、いったん帰国して就職して、海外就職はセカンドステップとして考えています。

―最後に日本の高校生にメッセージをお願いします。

藤山 私はマレーシア留学は100%成功だったと思います。いろんな人にすすめたいですね。

岩成 私もマレーシア留学をおすすめします。なんとなく日本の大学に進学する高校生は多いと思うけど、進路は簡単に決めて欲しくないですね。

JSAMではFacebookやInstagramでリアルな留学生活をお伝えしているので、マレーシア留学に興味がある方はぜひそちらもチェックしてみてください。

 


関連記事 
日本人留学生が主催する「就活フェア in マレーシア’19」開催

 

その他のインタビュー記事
マレーシアで活躍するこの人に聞く10の質問

 
参考サイト
JSAMマレーシア日本人学生会公式ウェブサイト

 
公開日:2019年5月28日